Ⅲ-2 労働力人口や企業の経営資源の減少に伴い、機械製品のコンポーネントをすべて内
製するのではなく、その一部を外製することは一般的になってきている。特に新しい分野
の製品を開発するに当たっては、自社のリソースでは対応が難しいコンポーネントを外製
化し、外部の専門企業が持つ高い知見や技術力を自社のために活用できるのは大きなメリ
ットとなる。
(1) 新しく開発する機械製品を具体的に1つ示し、その設計を担当する技術者の立場で、
一部のコンポーネントを外製する場合の課題を多面的な観点から3つ抽出し、それぞれ
の観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。
(2) 抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決
策を示せ。
(3) すべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対応策について、専門
技術を踏まえた考えを示せ。
解答例
1.具体的な製品と外製化に伴う課題
(1) 対象製品
本稿では、エンジン生産ラインにおけるワーク搬送用コンベアを対象として、外製化(サプライヤーへの委託)に伴う課題を整理する。
(2) 外製化に伴う課題
①納期・日程の観点
外製化では、輸送時間の増加に加え、生産計画や優先順位の調整を自社で即時に行いにくく、内製に比べて納期が長期化しやすい。例えば、ライン停止に直結する部品(コンベアのローラやベルト、軸受など)が突発的に必要となった場合、内製であれば優先的に製作できる一方、外製ではサプライヤーの生産順序に依存し、調達遅延のリスクが高まる。
②品質の観点
外注先と自社の間で品質基準の解釈が一致しない可能性があり、また外製化により製造工程の可視性が低下するため、内製時と同等の品質維持が難しくなる。例えば、表面粗さ、バリの残存、摺動部の動作性といった項目で許容範囲がずれると、組付け後の異音や摩耗増大などの不具合につながり得る。
③情報漏洩の観点
外部発注では、図面、材質、寸法公差、組付け関係といった情報の開示が不可避となり、情報漏洩リスクが生じる。例えば、コンベアの治具や専用部品の設計意図が外部に流出した場合、類似品の製造や他社への横展開を通じて競争条件が悪化するおそれがある。
2.最重要課題と解決策
(1) 最重要課題
外製化に伴う課題のうち、「製品品質の維持」を最重要課題とする。品質低下は売上減少に直結し得るためである。外製化は労働力・経営資源の制約への対応策であるが、その結果として品質を損ない売上を低下させることは本末転倒である。したがって、外製化推進においては品質保証の整備を優先する。
(2) 解決策
①生産・品質情報の可視化
サプライヤーの生産状況、不良率、検査結果等をデータ化し、社内からリアルタイムに参照可能とする。これにより、製造工程の状況や実施中の品質管理の内容が明確となり、異常傾向を早期に把握できる。不適切な工程条件や検査方法が確認された場合は、是正指導する。
②品質基準の共通化と定量化
サプライヤー訪問および継続的な協議を通じて、品質基準の解釈を統一する。特に、摺動部の動作抵抗のような感覚的に評価されやすい項目は、良否判定が担当者の主観に依存しやすい。そこで、抵抗値等の定量指標と許容範囲を設定し、判定基準の客観化によって品質のばらつきを抑制する。
③受入検査の再設計と自動化
納入後の受入検査について、検査項目・判定基準・サンプリング方法を明確化し、部品検査を体系化する。さらに、画像センサ等により自動化可能な項目は自動化し、人為的な見落としの低減を図る。これにより、検査品質の安定化と同時に、検査工数の削減も期待できる。
3.新たに生じる懸念と対策
(1) 新たに生じる懸念事項
品質面で信頼が確立すると発注が単一サプライヤーに集中しやすい。結果として、当該サプライヤーのトラブルにより供給が停止した場合、自社の生産全体が停止するリスクが高まる。
(2) 懸念への対策
①複数調達(マルチソーシング):同一部品または互換性のある類似部品を、複数社から調達できる体制を整備し、供給停止リスクを分散する。類似品の製作実績を持つ先を確保しておくことで、緊急時の代替製作も期待できる。
②適正在庫の保有:供給停止が発生しても一定期間は生産を継続できるよう、安全在庫を設定する。
③連携強化による予防:需要見通しや設計変更等の情報を早期共有し、サプライヤーの計画生産を支援することで、トラブル発生確率の低減を図る。