I-2 社会インフラに関連する機器・設備では、ひとたび事故が発生して稼働が停止する
と、その影響は事業所内に留まらず、我々の社会生活にまで及ぶ恐れがある。その際、公
益が毀損されるだけでなく、直接的若しくは間接的に公衆の安全が損なわれることも想定
される。そのため、事故発生直後から稼働再開に至る各局面で、迅速かつ適切な対応が求
められる。
上記の状況を踏まえて、以下の問いに答えよ。
(1)社会インフラに関連する機器・設備において、故障や破損などに起因して公衆に影響
を及ぼす重大な事故が発生した際の事故発生直後からの取組について、当該機器・設備
の運用・管理を統括する技術者としての立場で、多面的な観点から3つの課題を抽出し。
それぞれの観点を明記したうえで、その課題の内容を示せ。
(2)前問(1) で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その理由を述べ
よ。その課題に対する複数の解決策を、機械技術者として示せ。
(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても残存しうる若しくは新たに生じうる
リスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
(4)前問(1) 〜(3)の業務遂行に当たり、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から必要となる要件・留意点を題意に即して述べよ。
解答例
1.事故発生直後における取り組み上の課題
①多様な専門技術者との連携の観点
事故発生後の復旧対応および二次災害防止策を講じるためには、機械、制御、防災担当など、複数分野の専門技術者との連携が不可欠である。一方で、夜間に事故が発生した場合や通信障害が生じた場合には、円滑なコミュニケーションが確保できない可能性がある。このため、緊急時において関係者全員と迅速かつ円滑に連携を図る体制を構築することが課題となる。
②復旧および二次災害防止策の決定の観点
復旧および二次災害防止のための適切な対策を決定するには、事故の発生箇所および原因を正確に特定する必要がある。しかし、事故現場が封鎖される場合には現物を直接調査することが困難となる可能性がある。そのため、遠隔地から事故原因を特定し、適切な対策を立案することが重要な課題である。
③現場作業者への指示の観点
事故発生後には、二次災害を防止するための応急処置や、復旧に向けた作業について、現場で作業に従事する者へ的確な指示を行う必要がある。しかし、事故の発生時刻によっては、作業者が現場に不在である場合や、すでに避難指示が出されている場合など、現場に立ち入ることができず、対面でのコミュニケーションが困難となる可能性がある。このような状況下においても、リモート環境下で誤解の生じない指示伝達を行うことが課題である。
2.最重要課題とその解決策
(1) 最重要課題
前項②で示した、現物を直接確認できない状況下において事故原因を特定する課題を、本検討における最重要課題と位置付ける。二次災害防止のための処置および復旧に向けた対策を迅速に立案することが急務であり、その為に事故原因の特定が必要である。
(2) 解決策
①設計段階のF T AおよびF M E Aの徹底
設備設計時に、F T AおよびF M E Aを用いた故障リスク評価を常期から徹底的に実施することで、事故発生時にその内容から原因を想定することが可能となる。例えば、事故が火災であった場合、F T Aのツリ構造を用いることで、発生経路を把握することができる。また、想定していなかった故障や事象が発生した場合であっても、既存のF T AおよびF M E A資料を再確認することで、原因特定に向けた有効な手がかりを得ることが可能である。
②IoT 技術を活用した装置状態の遠隔把握
IoT 技術を活用し、装置の状態を遠隔地から把握可能な仕組みを構築する。具体的には、設備に温度計や振動センサーを設置するとともに、作動流体の圧力監視機能を追加し、それらのデータを遠隔地から閲覧可能とする。これにより、遠隔地から設備の状態を把握することが可能となり、事故発生時刻における各種デタを分析することで、原因の推定が可能となる。
③ドローンおよびロボットによる事故現場の状況確認
事故現場に立ち入ることができない場合には、ドローンやロボットを用いて遠隔地から現場状況を調査する手法が有効である。
3.新たに生じうるリスクとその対策
(1) 生じうるリスク
安全対策を強化することにより、設備投資や運用コストが増加るリスクが生じる可能性がある。
(2) 対策
IoT 技術を活用した予知保全の推進
IoT 技術を活用し、予知保全を推進することで、安全対策にリソースを集中させた分、メンテナンス費用の低減を図る。IoT 技術は設備の故障原因の特定に有効であるが、日常的に正常時のデータおよび故障発生直前のデータを収集し、両者を分析することで、故障の兆候を把握できる可能性がある。その兆候が確認された段階で、設備休止中に部品の交換や修復作業を実施することにより、効率的なメンテナンスが可能となりメンテナンスの費用を削減できる。
4.業務遂行のための要件・留意点
安全に対する最新の技術・設計手法を積極的に取り込み、技術者の知識を深め、素質・能力向上に努める必要がある。