1-1 機械設計【選択科目Ⅲ】
Ⅲー1 グローバルレベルで製品=モノがコモディティ化し、 機能や性能で差異化しづらく、
製品の収益性低下を招いている。また、顧客はモノよりも購入前や購入後の顧客体験価値
=コトを重視し、所有から利用へ価値がシフトして来ている。このような背景から、従来
の良い製品を作れば売れるという時代から、顧客との関係性を強化して継続的なサービス
提供を行う循環型ビジネスの時代へ転換が進んでいる。
消費者ニーズの変化に伴い、機械設計の分野においてもアフターサービスや従量制サー
ビス、定額制サービスなどへの適応が可能となるような製品設計への思想の転換が求めら
れている。
(1)このような時代において、サービスへ適応させた製品を設計する際の課題を、機械設
計技術者の立場で、具体的な製品設計事例を挙げて、多面的な観点から3つ抽出し、そ
れぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。
(2) 抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、最も重要と考えた理由とその
課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)全ての解決策を実行しても新たに生じるリスクとそれへの対策について、専門技術を
踏まえた考えを示せ。
解答例
1 具体的な製品と課題
(1) 具体的な製品
自動車のエンジン組立ラインの搬送用ローラーコンベアについて考える。
(2) 設計の際の課題
①サービス業務の容易化の観点
アフターサービスを行う事を前提とした製品を設計する際、サービスを行う人がなるべく専門的で高度な技能が必要なく業務を行えるように設計する事が課題である。例えばメンテナンスのサービスを付加した製品を販売する場合、実際にメンテナンスに行く作業員の確保や、効率よく作業し収益を上げる点から、サービスの業務に高度な技能を必要とする作業、時間のかかる作業は排除するべきである。
②納入後の製品の状態の把握の観点
製品の稼働状態を遠隔地から把握できるような仕組みを作る事が課題である。コンサルティングやメンテナンス等の新たなサービスを創出する為にはユーザーがどのようにして製品を使用しているか、コンベアの各部品は納入当初と変わらず問題なく動作しているか
のデータを収集する事が必要になってくると考えられる。この為のセンサの取り付け、通信、モニタリングのソフトウェアを製品に織り込む必要がある。
③コストの観点
例えばIoT を使って装置の稼働状態を分析し、生産効率向上のアドバイスをする、メンテナンスのサービスを付けるなどを行うとすると、IoT に必要なセンサを追加、なるべくメンテナンスが要らないように製品の長寿命化等の製品の性能の向上、機能の追加が必要になってくる。これらは製品のコストアップに繋がる
サービスに必要な機能を持たせつつ、製品製作のコストを下げていく事が課題である。
2.最重要課題とその解決策
(1) 最重要課題
前項③のコストを削減する課題を最重要課題と考える。サービス提供型製品へのシフトは収益性の低下の改善の目的から始まっており、収益の向上の為には、サービスでの差異化とは別に、コスト削減は必要不可欠であるからである。
(2)コスト削減の解決策
①ユニット、部品の共通化
機能単位でモジュール化し他のシリーズの製品とも部品やユニットを共用することで、それらを大量生産でき、コスト削減となる。例えばローラーとシャフト、モーターとスプロケット、取付ブラケットをユニットとし、全シリーズで共通化しする。
②CAEを使い設計業務の効率を上げる
積極的に3Dモデルを使って解析、動作シミュレーション、形状最適化を行い、試運転時の不具合による手戻りを防ぎ、設計開発費を削減する。
③輸送の効率を上げる
設計段階から製品の最終の出荷の荷姿まで考慮した形状を考える。そして、輸送車両に積載した時のデッドスペースを少なくし、積載率を上げる。これにより輸送回数を減らせ、輸送費削減となる。
3.新たに生じうるリスクとその対策
(1) 新たに生じうるリスク
標準化されたユニットを組合せた設計、C A Eによる便利なツールに頼る事で業務に従事する設計技術者の知識・技能の停滞のリスクが考えられる。標準化により、創造力の停滞、詳細な設計思想を理解しないまま組み合わせの設計を行う、3Dモデル多用の為、図面を見る力の低下などが考えられる。
(2) 対策
①O F FーJ T で設計に必要な力学、標準ユニットの構造の詳細を教育する。
業務とは別に時間を取ってベテラン技術者から若手技術者への教育や、技術者全員で講習などで最新技術の知識の習得を行い、技術力を向上させる。
②継続的な標準ユニットの改善
標準ユニットの改善の業務を通して標準ユニットの内部の詳細、元々の設計思想を理解する事ができる。継続的に改善の取組みを行い、改善案を打ち出す事で創造力の向上に繋がる。 以上