令和7年 必須Ⅰ-2

I-2 機械製品の設計から製造までの様々な段階において、実験式の精度、設計ツールの
解析精度,数値解析の誤差,部品の加工精度,組立精度などの,ある幅をもった不確かさ
又は誤差がかならず存在する。以下では、これらを総称して「精度」と呼ぶことにする。
これらの精度は相互に関係しており、最終的な製品の特性や性能を向上させるためには各
段階での精度の定量的な評価と、その相互関係の評価とが必要とされる。


(1)機械部門における技術者としての立場で、機械製品を1つ想定し、最終的な製品の特
性や性能を向上させるための精度にまつわる技術的な課題を多面的な観点から3つ抽出
し、それぞれの観点を明記したうえで内容を示せ。
(2)前問(1)で抽出した課題のうち最終的な製品の特性や性能に対して最も重要と考え
るものを1つ挙げ,これを最重要とした理由を他の精度との相互関係も含めて述べよ。
さらにその課題に対する複数の解決策を、機械部門の専門技術用語を交えて示せ。
(3)前問(2)で示した解決策をすべて実行しても残存しうる、若しくは新たに生じうる
懸念事項を示し、さらにその対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
(4)前問(1) 〜(3)の業務遂行に当たり、技術者としての倫理、社会の持続可能性の
観点から必要となる要件・留意点を題意に即して述べよ。

解答例

1 . 具体的な製品と精度にまつわる技術課題

( 1 ) 具体的な製品

機械製品の組立ラインに用いる搬送コンベアとする。最終製品の特性・性能を向上させるためには精度について以下の技術的課題がある。

( 2 ) 精度にまつわる技術課題

①加工の観点:加工精度を確保できる部品形状の設計
 加工精度向上のためには、加工し易い形状を前提とした部品設計が課題である。設計段階では機能優先や材料費削減の観点から、余肉や付加形状を排除しがちである。しかし、クランプ位置の確保等、加工時の段取り性や、加工中の変形を抑制する剛性を考慮しない場合、加工ばらつきが増大し、結果として品質低下や手直し増加を招く。したがって、加工のし易さと材料費・加工費のバランスを評価した設計とすることが重要である。

②組立の観点:調整作業性を考慮した構造
 組立段階では、調整のし易い設計とすることが課題である。例えば、コンベアのレベル出し(高さ・傾き)の不適切さは搬送不良につながる。よって、調整箇所に対し工具が挿入できる作業スペースを確保するとともに、レベル状態を確認しながら調整できるレイアウト(測定器設置、確認視認性)を設計に織り込む必要がある。

③設計の観点:適切な公差設計と図面指示
 設計段階では、製品要件および使用条件を踏まえ、性能とコストのバランスを満たす公差指示を図面上で行うことが課題である。公差を過度に厳しくすると加工難易度が上がり、検査工数・治工具費も増加する。一方で、公差が緩すぎれば組立調整負荷や搬送不良のリスクが増大する。したがって、必要十分な精度を確保する「バランスの取れた公差設計」を行うことが重要である。

2 . 最重要課題と解決策

( 1 ) 最重要課題

最重要課題は、加工し易い形状とし加工精度を向上させることである。これは全ての部品に関わる横断的課題であり、部品点数が多いほど累積的に影響が拡大する。加工精度が確保できれば、ダウエルピン等による位置決めで機械的に組み上げることが可能となり、シムによる現合調整を削減できる。結果として、組立品質の平準化と組立コスト低減につながる。

( 2 ) 解決策

①加工面の剛性確保(リブ補強)
 加工時には切削抵抗や発熱により変形が生じ得るため適切な剛性を確保する必要がある。一方、全体板厚の増加は重量・材料費増を招く。そこで、変形が支配的となる部位にリブを設け局所的に剛性を高める。

②部品の一体化による誤差低減
 部品点数の増加は積み上げ誤差を増大させ、ばらつきを拡大する。また、部品増は一般に製造コスト増にもつながる。したがって、溶接等を活用し可能な範囲で構造を一体化して部品点数を削減する。

③部分焼入れによる熱影響の最小化
 全体焼入れは熱変形により寸法精度へ悪影響を与える高周波焼入れ等を用い必要部位のみを部分焼入れし、熱影響による寸法変化を最小限に抑える。

3 . 新たに生じる懸念と対策

( 1 ) 新たに生じる懸念事項

設計で加工精度向上を配慮しても、実際の精度は加工設備条件や加工者の技能に依存する。そのため、設計意図どおりに精度とコストの両立が実現できないリスクがある。

( 2 ) 懸念への対策

設計段階から加工部門と連携し、適切なタイミングでD R を実施する。想定工程・治具・加工順序を踏まえた懸念点や要望のフィードバックを得て図面・形状へ反映し、要求精度の実現性とコスト妥当性を事前に担保する。

4 . 業務遂行にあたり必要となる要件・留意点

加工の際のクーラント、切粉やメッキ処理の溶剤は廃棄物となる。できる限り再利用、リサイクルを心がけ、廃棄の際は適切な処理を行い、地球環境保全に留意する。