I-2 持続可能な社会実現に近年多くの関心が寄せられている。例えば、2015年に開催
された国連サミットにおいては、2030年までの国際目標SDGs(持続可能な開発目標)
が提唱されている。このような社会の状況を考慮して、以下の問いに答えよ。
(1)持続可能な社会実現のための機械機器・装置のものづくりに向けて、あなたの専門分
野だけでなく機械技術全体を総括する立場で、多面的な観点から複数の課題を抽出し分
析せよ。
(2) 抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する解決策を具
体的に3つ示せ。
(3)解決策に共通して新たに生じるリスクとそれへの対策について述べよ。
(4) 業務遂行において必要な要件を機械技術者としての倫理の観点から述べよ。
解答例
1 持続可能な社会実現のための課題
①環境保全の観点
廃棄物を減らす事が課題である。環境の保全は持続可能な社会の基盤と言えるほど重要である。しかし、廃棄物の処理の過程で、焼却の際のダイオキシン等の有害物質の発生による大気汚染や、埋立処分地では、その土地の生態系の破壊、土壌汚染、水質汚染等が起こり、環境破壊が発生する。持続可能な社会の実現の為には廃棄物を減らしていく必要がある。
②労働の観点
十分な労働力の確保が課題である。経済活動や行政福祉等、社会を維持する為に労働という資源が必要である。しかし先進国では少子高齢化が進み、人手不足に悩む企業が多く、現在十分な労働力を確保できているとは言えない。A I や協働ロボット等の科学技術の発展や、社会制度の改正を行なっていき、少子高齢化社会の中で、安定した労働力を確保していく必要がある
③平等な社会の観点
性別、年齢、出身に関わらず全ての人に平等な機会が与えられるようにしていく事が課題である。不平等な社会では、不安や対立を生み、社会が不安定となる持続可能な社会の実現の為には平等で安定した社会を作る必要がある。これには社会制度を整える事の他に、例えば、製造現場での日本語のコミュニケーション能力や、重量物を扱う体力を補う機械の技術を発展させ性別や国籍の障壁を取り除く取り組みを行なっていく事も必要である。
2最重要課題と解決策
( 1 ) 最重要課題
前項①の廃棄物を減らす課題を最重要課題とする。これは、世界各国で共通の課題である事、地球環境保全の問題解決は新たな技術のイノベーションに繋がる可能性がある事と考えられる為である。
( 2 ) 機械技術者としての解決策
①リサイクルしやすい機械の設計を行う
リサイクルすることにより廃棄物を減らす事ができる。リサイクルは素材ごとの分別が基本である。例えば、産業用機械で、設備の更新により不要になった部品をリサイクルし易いように、異素材部は取外しをし易い構造とする。なるべく同一金属を使うなどの配慮を設計時から行い廃棄物を減らしていく。
②部品の形状最適化
機械の性能を損なわず、部品の余分な部分を無くした最適な形状の設計を心がける事で廃棄物の総量を減らす。具体的な方法として、トポロジー最適化ツールを駆使して、固定概念に囚われない発想で形状を見直し、削減余地を見出していく。
③部品の再利用
機械を廃棄ではなく、必要な部分を修理、改造して再利用する事を前提とした体制を整える。例えば、修理サービスの提供や部品交換を安価で行えるようなビジネスにする。これにより、廃棄物を減らす事ができる
3 . 新たに生じるリスクと対策
( 1 ) 新たに生じうるリスク
機械設計に制約がかかる。これが他社製品との差別化や、イノベーションの障害となり、製造業の国際的競争力低下のリスクが考えられる。
( 2 ) 対策
①品質の良さや長寿命化の方面で付加価値を付け、競争力を上げる。
設計多機能化や画期的なアイデア出なくても、製造工程の品質管理や加工技術で品質の上げて他社と差別化する事は可能である。
②メンテナンスや使いやすさの面で差別化する。
機械の操作が簡単である、交換部品へアクセスしやすい設計とする、使用部品の長寿命化などで他製品と差別化する事で競争力を上げる事ができる。
4. 業務遂行において必要な要件
業務遂行にあたり、さまざまな分野の最新の技術を積極的に学び、技術者としての資質能力向上に努めるものづくりにおいて、完成品だけでなく、プロジェクト全体で、例えば、開発過程では試作を極力少なくするような設計手法で行う、製造過程では切粉やクーラント、メッキ処理液等の廃棄物を極力排出しないように努める等で地球環境保全を意識して業務を行う必要がある。 以上
・課題の整理
①環境保全の観点:廃棄物処理の課題
②労働の観点:少子高齢化の社会の中で労働力を確保する課題
③平等な社会の観点:不安や対立のない平等で安定した社会を作る課題
・最重要課題
廃棄物処理の課題
・解決策
①リサイクル(分別)し易い設計
②部品の形状最適化
③部品の再利用
・新たなリスク
設計に制限がかかり、他社との競争力が低下する